The P-I Brånemark Memorial Symposium

KAROLINSKA INSTITUTET, SOLNA. Sept. 27, 2015
2015年9月27日、スウェーデン王国ストックホルムにおいて、昨年逝去されたBrånemark教授を偲ぶ記念シンポジウム
「The P-I Brånemark Memorial Symposium」が開催されました。
今回、実際に参加され、また基調スピーチをされた小宮山 彌太郎先生より、
シンポジウムの模様を特別に寄稿いただきました。
小宮山 彌太郎先生
小宮山 彌太郎 先生

The P-I Brånemark Memorial Symposium に参加して

例年より暖かいとは言うものの、夜間には5℃程度にまで気温が下がり、日本から出向くと肌寒く感じた。金太郎の腹巻きをプレゼントしたくなるような、へそ出しの若い女性も見られたが、街路樹の橡の葉が衣替えをはじめ、街行く多くの人々にはコート姿が目立ち、コンサート・ホール前の市場には黄色く色づいた茸(Kantarell)が売られており、まさに秋。

ストックホルムの街並み。市場では色鮮やかな食材が並ぶ。 ストックホルムの街並み。市場では色鮮やかな食材が並ぶ。

オッセオインテグレーションの発見とその臨床応用は、近代歯科界に大きな変革をもたらしたものの一つとして周知されている。その立役者であるPer-Ingvar Brånemarkの逝去から9か月、2015年9月24~26日の間、第24回EAO(European Association for Osseointegration)が、奇しくもその母国であるSweden王国の首都Stockholmの郊外Älvsjöにある会議場・展示場(Stockholmsmässan)で開催された。

その翌日、27日には、Stockholmに隣接するSolnaにあるKarolinska Institutetで、Brånemark教授に縁のある人々が登壇しての教授を偲ぶ記念シンポジウムが開催された。無機質で斬新な外装に対して、木材を多用してスウェーデン的な雰囲気を漂わせる内装のこの会場Aula Medicaは、2010年のKarolinska Institutet設立200年を祝して、衣料の分野で世界に展開しているH&M社創立者Persson家により寄贈されたとのことであったが、建物の名称に使われることなく、それを知らせる表示は見つけられなかった。このホールに隣接してノーベル医学・生理学賞選考委員会のNobel Forumのレンガ造りの建物があり、不思議な縁を、そして一抹の寂しさがよぎった。

会場となったKarolinska Institutet(外装) 会場となったAula Medica(外観)

伝統と革新が交差する北欧デザイン(内装) 伝統と革新が交差する北欧デザイン(内装)

ブローネマルク・システムのヨーロッパ大陸におけるパイオニアのお一人であるLeuven大学名誉教授Daniel van Steenbergheの素晴らしい司会の下に、会が始まった。

Leuven大学名誉教授Daniel van Steenberghe  司会によりスタート Leuven大学名誉教授Daniel van Steenberghe 司会によりスタート

まず、現EAO会長でLund大学歯学部長のBjörn Klinge教授から故人とEAO発足との経緯が説明された。Barbro Brånemark夫人が故人の遺志を継いでBrazilのBauruにあるBrånemark Osseointegration Centerにおける活動とそれへの協力の要請があり、次いで医学部を卒業したのちにBrånemark研究室に入り、その後、准教授として長きにわたり教授をサポートしその推移を熟知しているTomas Albrektsson現Malmö大学教授が、時系列で経緯を発表し、ウサギ脛骨における偶然のオッセオインテグレーションの発見が、BrånemarkがLund大学からGöteborg大学に移籍後の1962年であったことを公言した。

  • Lund大学歯学部長 Björn Klinge教授

    Lund大学歯学部長
    Björn Klinge教授

  • Barbro Brånemark夫人

    Barbro Brånemark夫人

  • Malmö大学 Tomas Albrektsson教授

    Malmö大学
    Tomas Albrektsson教授

1964年に研究室に残り、筋組織の微小循環の研究に従事したHarvard大学Elof Eriksson整形外科学教授、1962年入局して神経組織の再生の研究を行い、1983年から手指の再建に取り組んでこられたMalmö大学整形外科学Göran Lundborg名誉教授、1967年に入局し四肢切断症例への修復に1980年から臨床応用されているGöteborg大学整形外科学Björn Rydevik教授、骨伝導性補聴器(BAHA)の適用に貢献したGöteborg大学耳鼻科Anders Tjellström元主席外科医ら、研究室を巣立った医師が教授との関わりと医学的な貢献とを説明された。さらに、顎顔面修復をはじめとする医科領域に不可欠な補綴装置作製の作製に芸術的なセンスで貢献されている、Sarlgrenska病院のKerstin Bergström女史が、故人に対して心を打つメッセージ送られた。

  • Harvard大学 Elof Eriksson教授

    Harvard大学
    Elof Eriksson教授

  • Malmö大学 Göran Lundborg名誉教授

    Malmö大学
    Göran Lundborg名誉教授

  • Göteborg大学 Björn Rydevik教授

    Göteborg大学
    Björn Rydevik教授

  • Göteborg大学 Anders Tjellström元主席外科医

    Göteborg大学
    Anders Tjellström
    元主席外科医

  • Sarlgrenska病院 Kerstin Bergström女史

    Sarlgrenska病院
    Kerstin Bergström女史

歯科医師として最初に入局されたお一人のÖrebro大学病院のRagnar Adell名誉教授、Brånemark ClinicのTorsten Jemt教授、Bertil Friberg教授らおなじみの先生方が、歯科臨床における経験と成績を報告し、Ulf Lekholm名誉教授がNobel Biocare社社員で最古のお一人であるBerit Adielson女史と共に、コースをはじめとする教育について報告された。

  • Örebro大学病院 Ragnar Adell名誉教授

    Örebro大学病院
    Ragnar Adell名誉教授

  • Brånemark Clinic Torsten Jemt教授

    Brånemark Clinic
    Torsten Jemt教授

  • Brånemark Clinic Bertil Friberg教授

    Brånemark Clinic
    Bertil Friberg教授

  • Göteborg大学 Ulf Lekholm名誉教授

    Göteborg大学
    Ulf Lekholm名誉教授

  • Nobel Biocare Berit Adielson

    元Nobel Biocare
    Berit Adielson女史

アメリカからはBaylor歯科大学Stephen Parel教授が、補綴的な観点からインプラント療法を評価し、Washington州Spokaneでご開業のKenji Higuchi先生が、生体力学の権威でインプラントの開発にも貢献された故Richard Skalak名誉教授の後継者であるStanford大学John Brunski教授と共に加重時期ならびに力学的観点からの知見を発表され、ベルギーのBrussels自由大学Chantal Malevez名誉教授がザイゴーマ・インプラント療法について講演された。

  • Baylor歯科大学 Stephen Parel教授

    Baylor歯科大学
    Stephen Parel教授

  • Kenji Higuchi先生

    Kenji Higuchi先生

  • Stanford大学 John Brunski教授

    Stanford大学
    John Brunski教授

  • Brussels自由大学 Chantal Malevez名誉教授

    Brussels自由大学
    Chantal Malevez名誉教授

Marcelo Ferraz de Oliveira医師が、Bauruにおける教授も関与した顎顔面再建例を報告し、New York大学のEduard Rodriguez教授が顔面移植症例を提示され、聴講者に衝撃を与えた。

  • Marcelo Ferraz de Oliveira医師

    Marcelo Ferraz de Oliveira医師

  • New York大学 Eduard Rodriguez教授

    New York大学
    Eduard Rodriguez教授

Nobel Biocare社Richard Laube氏が、インプラントの世界的な現況と今後の抱負とを語られて会が閉じられた。各演者の持ち時間が20分とあまりにも短く、演者数を減らすか、あるいは2日間の会期であっても良かったように感じたが、参加者たちの満足した顔が印象的であった。それは、すべての演者が触れていた、故人の他人を愛する姿をすべての参加者が再認識し、今でも教授をいかに慕っているかの証であろう。

前夜メモリアルディナーで基調スピーチをする小宮山先生

前夜メモリアルディナーで
基調スピーチをする小宮山先生

このシンポジウムの前夜には、王宮の向かいにありノーベル賞受賞者が宿泊される格調高いGrand Hotel内の“Vinterträdgården”で追悼の宴が催された。前菜の皿が下げられたあとに、教授を偲ぶスピーチの機会を与えていただいたが、あまりにも深刻になることを避けるために、曝露話しも披露した。ある参加者の言によると、その際にテーブル上のキャンドルの炎が揺れたとのことで、その方の地方では霊がその場に来た証拠との言い伝えがあるそうで、もしかしたら故人の怒りに触れたのではないかと恐れている。教授が好んだ著名な声楽家Anders Ekborg氏が、“Time to say goodbye”をはじめ全4曲を朗々と歌い上げた。パイオニアのお一人のアイルランドBlackrock ClinicのDavid Harris教授が故人を讃えるスピーチで会を締めくくった。

1965年9月29日のオッセオインテグレーション・タイプのインプラントの臨床応用から半世紀が経過した今年、ノーベル医学・生理学賞の受賞の可能性を夢見ていたが、その報を受ける前の教授のご逝去は何とも残念に思う。受賞されていたならば、インプラント療法がより認知され、世界中の歯科界がもっと高く評価され、若人に歯科進学への関心を高めたのではないであろうか。

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